ちょっと考えた

タイ人農業研修生問題について(Part3)  No.4
11月7日、協会側から出ていたタイ人研修生ビザ延長申請を入管が認めず、研修生全員帰国という形で一応の結論を見ました。
妥当な決定だと思いますし、私もとりあえずはこれで良かったと思います。
しかし、この問題は多くの課題を与えてくれました。
協会内部の人の中には「せっかくおれたちが苦労して立ち上げたこの素晴らしい事業を、日本農業の実態を知らない外部の者や、順応性の無い研修生たちがだめにした。」という声が聞こえてきそうな気がします
「協会は決められたことをやっている。」「出来るだけの努力をした。」などと思っている人が多いような気がしてなりません。
協会内部の人たちは是非、自分たちが善しと信じてきたこと、信念としてやってきたこと、そして自分たちが常識と信じてきた事、一つ一つを、本当に良かったのだろうか、本当に正しかったのだろうかと、もう一度検証していただきたい。
もしこの計画が、協会側が主張するような、ボランティア精神に富んだ、双方に有意義な素晴らしい計画だとしたら、この素晴らしい計画をだめにしたのは、協会自身の稚拙な計画、甘い見通し、不十分な国際理解にあることを十分認識してほしい。
と、ここまでは協会側が主張する表側の理由に対する私の気持ちです。
実はこの問題の本質は別のところにあります。
この研修生招聘事業は公益法人である協会の会員全員が等しく会費を負担しておこなう事業で、受入農家のみがその費用を負担することは受益者負担となり、法律上出来ません。
研修生一人当たり100万円ほどかかる費用を、受け入れ農家のみで負担していたら、「せめて100万円ぶんは働いてもらおう」という気持ちになるのは当たり前です。
表向きは5.600人いる会員が数万円の年会費を納めてその会費でおこなっている公益事業ということになっていますが、実態は、会員のほとんどは名前だけの幽霊会員で、研修生にかかる費用(今回は食費を除き1農家あたり96万円だったとの事)はすべて受け入れ農家が支払っています。
まず、ここに大きな嘘があります。
この嘘がある限り、この計画は研修を名目にした低賃金労働者斡旋事業に他ならないという謗りを免れません。
農業後継者不足からからくる人手不足や、人件費の高騰は日本の農家にとって大変深刻な問題で、たとえ100万かかろうが、200万かかろうが、このような研修生に対する需要は確実にあります。
ある農家は「日系人は正式に労働者として雇用出来るのに、なぜタイ人や他のアジアの人はいけないんだ。」「悪いのは日本の法律の方だ。」という声も聞かれました。
しかし、このような事実が表沙汰になっても協会側は決して認めようとしません。
あくまでもこの事業は、「日本の進んだ農業技術を発展途上国の農家に伝えるボランティア事業である。」という表側の理由を主張するだけです。
この問題の本質を、受け入れ農家も、そして協会自身さえも理解していない節があります。
うまくいっている研修生もいるでしょう。
しかし、うまくいっている理由は、あくまでもその受け入れ農家が並大抵ではない努力をしているか、研修制自身が並大抵ではない我慢をしているか、どちらかで、この計画自身が素晴らしいからという事では決してないのです。
受け入れ農家も努力しているでしょう。
しかし、あなたがたがしてきた事で、本当に日本の優れた農業技術(私はそうとは思わないが)をタイの若者に伝える事が出来たのでしょうか。
そしてそれが、タイおよびアジアの農家の未来のために役立つのでしょうか。
このような稚拙な計画の基では、どんな高尚な理想を持っても、このようなデリケートな研修事業は成功し得ない事をわかっていただきたい。
そして協会にとってはまことに不本意な事かもしれないが、どう見ても、低賃金労働者斡旋事業といわれても仕方の無い事業に成り下がってしまっているのです。
外国人がホームステイすれば国際交流。庭で外国人といっしょにバーベキューをすれば国際交流。
このように、そこの浅い国際交流が盛んな日本の、しかも1地方都市で起きたこの事件。
同じような事が日本中で起きているのではないでしょうか。
1997/11/11

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